美荷樓の起源は、中国からの移民が多く住む石硤尾のスラム街を襲った1953年の大火事で、この大惨事を受け当時の香港総督が公営住宅の建設を開始した。
香港は土地が少ない場所。だからこそ、それぞれの場所がそれぞれの役割きちんと果たし、人々の生活を円滑にする。自分たちの役割を認識している人々で成り立つコミュニティは、お互いの思いを理解し合っているから居心地がいいかもしれない。余分な、心配をしなくてもいい。
香港に居た時は、いつも人々のエネルギー溢れる姿に感嘆していた。住居は狭小かもしれないけれど、人々はより大きな世界を目指して、上昇を目標に縦横無尽に動き回っている。「人生は広くもなれば、狭くもなる。それは、人生から何を得るかではなく、人生に何をそそぎ込むかにかかっている」。赤毛のアンの作者のモンゴメリのこの言葉は曖昧さがない香港にぴったりだと思った。