正確には香港本ではなく、浅田次郎の対談集で「香港、この奥深き地よ」というタイトルで陳舜臣と香港について1997年の香港返還直後に二人が香港について話している。対談は浅田次郎の著作「蒼穹の昴」という中国を舞台にした話から始まる。いかに近代中国の歴史資料の扱いが難しいか、史実と違うことを平気で言う人がいる、歴史は勝者によって作られているという歴史の見方の話から徐々に「マカオと香料」や「アヘンと中国」というかぐわしい話になる。龍涎香というクジラの内蔵から分泌される香料といった中国通ならではの話題も。そんな中、浅田次郎がそもそも「ホンコン」というのは何語だったのかという質問に対して陳舜臣が水上生活者の「蛋民」の言葉だったと答えていた。蛋民は客家と似ており「後から来た人」であり、いいところに住めなかった。そんな客家出身者にはシンガポールのリー・クアンユー、台湾の李登輝、中国の鄧小平などがいると言っていた。極めて少数の水上生活者の「蛋民」の言葉、彼らが発した音が今に至る「香港」になっているということを知るとなんだか息詰る。
浅田次郎「歴史・小説・人生」2005年 河出書房 |
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