香港のストリートを眺め続けていも飽きない。市場でチープな代物を販売する売り子、食堂でひたすら中華鍋を振り回す料理人、路上で勝手にシートを敷いてゴミ同然のものを売っているおばさん。そして小食と呼ばれる小腹がすいたときに食べるようなスナックや魚肉の練り物を売っている屋台など香港のストリートには、いろんなスタイルが溢れている。それぞれに香港の匂いがある。コンクリートのビルに囲まれているにも関わらず、人の体温が伝わってくる。体温どころか全くの他人のなのにその人の生きるスタイルまで感じざる得ないようなこともある。しかもそのスタイルが自分の範疇に無い、唯一無二のスタイル。どうなってるんだ、香港?そんな想いが今でもある。香港が興味を掻き立てる。香港の街が放出する雑多なスタイルをより深く知りたくもなる。香港リサーチに出掛けたくなる。だから本屋でも香港本に手を伸ばす。今回の本は香港の旅行ガイドブック。
2013年に枻出版社から出た「LOCAL NAVI 香港」は旅行ガイド本で、「食」「観光地」「買い物」を紹介している。巻頭の「ローカルベスト」というセクションでレストラン、観光地などを見せて、あとは香港をエリアごとに分類してそれぞれの名物レストランや雑貨のお店などを紹介している。他にカラフルな地図や謎の小人とコメントが出てくるのが特徴と言えば、特徴か。レストランやデパートの情報に使えるちょっとしたアドバイスがあるのもいい。今の時代、情報量や情報の新鮮度で言えば、ガイド本はネットに圧倒的に不利だ。けれども、旅行本は気分を高めてくれる。お洒落なつくりの旅行本もきっと旅行気分を高めるだろう。そういう意味で、このガイド本に出現する小人のコメントが、実は旅行気分を盛り上げていたことに気付いたのは驚きだった。香港本の新たなスタイルを垣間見た、そんな感じがした。
自分は、香港に行くときはガイド本を持っていかない。自分が好きになる店は自分で探し出すという気持ちがある。が、ガイド本から発掘作業はする。紙面から、言葉から、写真から刺激になりそうな香港を探し出す。「Local Navi香港」から発掘されたのは人だった。頻繁に登場する小人とコメント。意外なところに香港を感じるのが楽しい。