泉麻人がDJ的な役回りで、昭和初期の東京を記録した資料をネタに、往年の東京フレーバーを粋に伝える『東京考現学図鑑』は、読んでも、見ても楽しい本だった。
時代が大正から昭和へ移るころ、美大出身の今和次郎と吉田謙吉は、「考現学」という彼ら独自の記録方法で世間の風俗を分析していた。世間の常識から離れた自由な調査は、視点が奇抜で観察の密度が濃い。泉麻人は、その今・吉田チームが残した東京の街を調査した資料を引用し、彼らの文章とスケッチをベースにしつつ、同時代の作家の文章、新聞記事、そして泉麻人本人が記憶する幼い頃の東京の記憶をちりばめた。それがいい感じのリズムとなり、昔の東京のそれぞれの街の音が響いてくる。
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