2010/09/04

香港のスペースに対する鋭い感覚








日本にあって、香港に無いものは?答えは、酒税、関税、消費税の3つで、これらが香港には実質的に無い。けれど数年前は違った。ワイン関税撤廃までの経緯は、2007年の初頭までは80%、それ以後は40%、そして2008年の2月に関税が完全に撤廃され、その効果は数年で現れた。香港はロンドンを抜いてニューヨークに次ぐワインオークション地となったのだ。

ブルームバーグの情報では2009年に香港で開催された14回のオークションの総売上額は6400万ドル(約53.9億円)。そしてこれらのオークションを開催しているのは欧米に本拠地がある競売会社達だ。ワイン関税が撤廃された2008年2月27日の15時間後にワインオークションを開いたイギリスのボンハム。共にロンドンで設立されたクリスティーズとサザビーズ。そして米のアッケル・メラル&コンディットなど。

サザビーズは2009年に香港で開催した3度のオークションで約12億円売上げ、アッケル・メラル&コンディットは1回のネットークションを含む計5回のオークションで約17.9億円を売上げた。

クリスティーズによればニューヨーク、香港、ロンドンで開かれるオークションの売上のうち、アジアのバイヤーは2005年には7%だったが、現在は61%を越えるという。

またオークションに限らずに香港はワイン業界のベストな商業地だと見なされている。 1998年から開催が始まったワインの国際的見本市のVINEXPO Asia-Pacific (ヴィネスポ アジア・パシフィック)の開催地の遍歴は、1998年に香港、2000年東京、2002年東京、2002年ニューヨーク、2004年シカゴ、2006年香港、2008年香港、そして今年も香港で開催された。2006年からは3年連続で香港で開催され、ワインの商売なら「香港」だと認識されている。そして日本のワイン生産者も香港を重視している。

ではなぜ香港がワインビジネスの拠点に他の都市より先駆けて成れたのか?。それは香港特有の街の性質にあると考える。香港は、とにかく面積が狭いところに人々が密集して生活している場所だ。そんな環境の中から、香港特有の「スペースへ対する鋭い俊敏性」が生まれたと思う。

例えば香港は、街中のビルの隙間に果物屋(ビルの壁に冷蔵庫を設置している)、あるいは散髪屋が存在する。スペースを誰よりも先に見つけさえすれば、それはチャンスとなる。香港のようなスペースが圧倒的に不足する街は、スペースがなによりも大事でその確保には他を圧倒するスピードが必要だ。つまり香港はチャンスとなるスペースを常に探し続け、見つけ次第、即座に行動に起こす人々で成り立っている。このような性質を持ち合わせている彼らが、ワイン業界の将来性の余地を見抜き、そして「ワインハブシティー」としての地位を香港のものにするために関税を無くすという大胆な方法を取って、数年でワインの一大拠点にした。
 
よく香港の地下鉄で少年たちが電車の扉が開いた瞬間に空席めがけて飛び込む場面にでくわすが、こんなところにもスペースへの貪欲さを感じてしまう。

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