2010/09/02

数千年のスパンで威力を発揮する観光名所



























この「日本人訪港見聞録」という本は1900年前後から1940年頃までの日本の小説家、俳人、画家、軍人、記者、実業家などが香港を訪れた際の「香港見聞」を収集したもの。ある人はこの本を、日本人が「外国」を強く意識し始め、グローバルな感覚が生まれた時代の貴重な歴史的資料だと言うかもしれないが、個人的にはもっと興味のある事実がこの本にはあり、それは「観光名所」のパワーだった。

香港の「ヴィクトリア・ピーク」という香港島の頂上にある有名な観光名所は、香港の街を見渡すことが出来るため(あるいは、ただ観光名所という理由で)現在、年間に700万人以上の観光客が訪れている。

このヴィクトリア・ピークに夏目漱石は香港滞在時に訪れている。なんだか今の観光客のノリと一緒だった夏目漱石。そして実はこの「日本人訪港見聞録」に登場する多くの日本人がヴィクトリア・ピークを観光している。やはり人は、「見聞録」を書いたり「ブログ」に投稿したり「みやげ話」をするために旅行しているふしがあると思った。旅は観光名所が大抵の場合はセットで、漱石が旅行した時代も現代もその密接な関係は変わらない。

みんな海外旅行をすれば、そのことを話したがる。そしてみやげ話のネタになりやすいものに「観光名所」がある。外国に旅するとなぜか、明らかに絵画や博物館に興味が無い人が「有名な美術館だから」という理由だけで作品を鑑賞するのも帰国したときに「話のネタ」になるからだと思う。だから友達のみやげ話で「えっ?お前、ピカソ美術館に行ってきたの??なんで、なんで?お前の口からピカソのピも聞いたこと無いのに」なんてことも。とにかく観光名所は皆が割合知っているということでコミュニケーションのネタになりやすい。

そんな「観光名所」の効果は派生的でパワフル。観光客の旅プランにぐっと強引に入り込むインパクトがあり、さらにみやげ話を提供し、その場所を人が人へと宣伝し、さらに観光名所一帯を盛り上げる。すごく重宝がられる広告塔のような存在。

ローマのコロッセオや中国の万里の長城は共に年間400万人以上の観光客が訪れるが、これらは数千年続く最もパワフルな観光名所達。だからこそ観光業を考える際には、数千年ほどの超長期的な視点が必要だと思った。それは観光名所となるようなものにはきっと数千年のスパンで人を引き寄せる力が備わっているからだ。

以下は「日本人訪港見聞録」に登場する香港のヴィクトリア・ピークを楽しんだと思われる一部の日本人と滞在年を紹介。
高橋是清 1898年














渋沢栄一 1902年













寺田寅彦 1909年













草野心平 1924年













石川達三 1930年













東恩納寛惇 1933年
   












高浜虚子 1936年













山本実彦 1937年













尾崎秀実 1937年、38年、39年

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