2013/01/30

卓球の言葉とプレイの幅

中国語には悪口の種類を表す言葉が3つある。1つ目が「發力」(ファリー)という言葉で、的確に相手の嫌な所を攻めるイメージ。そして2つ目が「扣殺」(コウシャ)。これは、一発で相手を仕留める悪口。そして最後に「發死力」(ファスーリー)。この言葉は考えうる最大限の罵詈雑言を相手に浴びせるという意味だ。中国人と喧嘩する時は、相手がどの種類の悪口を喋っているのか理解して対応しないと厄介なことになる。

というのは冗談で、実はこの3つの言葉は悪口の種類を示す言葉ではなくて、卓球のスマッシュの種類を表す単語。卓球選手の福原愛が雑誌のインタビューで「中国語にはスマッシュが細分化されているから、技が多くなる」と答えていた。中国の卓球文化の深みがスマッシュの細分化に現れている。

福原愛はこのインタビューで中国語と卓球の関係について話している。「中国語には、ドライブを打つ時にも細かい用語がたくさんあるんですよ。フットワークにも、スマッシュにも。日本語とは全然違います」。「中国の選手たちは子供 のころからずっと、そういう言葉で育てられます。だから、技が多くなりますよね。日本語だと、私の感覚では大雑把なかんじになっちゃいます」

中国語には日本語には存在しない卓球専門用語がある。それは中国人が卓球とより広く、深く、長く接して、ひとつひとつのプレイを分析し、わずかなニュアンスを区別するために専門用語を必死に生み出してきたからかもしれない。中国人が卓球で圧倒的な力を備えているのは、自分たちの「卓球の言葉」を生み出したからだと思う。福原愛が「 私の言語の限界が私の世界の限界を意味する」と言ったかどうかは分からないけれど、新しい世界は知らない言葉と出会って開かれる。

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